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08(side:龍之介
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_おかしい。
いつもなら送信して十分以内には返事が返って来るのに、今日は半日以上音沙汰無しだ。
特に意味もなくリハーサルの合間にメッセージが届いているか確認してしまう。
「どうしたの龍?落ち着きないね、今日」
「そ、そうかな?」
「さっきからスマホ気にしすぎ」
流石、天。観察眼はこのメンバ-1あるのだろう。何処かつん、とした態度を取りながらぶっきらぼうに言った天はボトルの水を飲み干してから「どうなの?」と目で訴えてくる。
どうもこうも無いが…。いや、ただ単にオレが顔に出やすいだけかもしれない。
「彼女?」
「いや…違うけど」
「龍に女を口説く勇気は無いだろ」
「確かに」
「ひどいなぁ」
言いたい放題の天と楽。此の二人は何かと対立が多いのに、こういう時だけは意見が一致する。
まぁ、二人の言う通り確かに売りのワイルドキャラはつくりものだが其の言い様は酷いなぁ。
「…友人……が入院しているんだ」
「……」
「……」
頼りない背中を思い出す。
(名前)が熱を出して病院に連れて行った夜を思い出す。
イタリアから帰国してきたばかりの祖国は急には心地の良い環境にはなれないだろう。
「…少し、心配なんだ」
なのに、(名前)は大丈夫、心配しないでと笑っていた。次の日も仕事があり、帰らなければならないオレに手を振る(名前)の寂しそうに笑った顔が脳裏から離れない。
「……驚いた。真逆君に此処までの顔にさせるとはね」
「え?」
「是非とも、写真に収めるべきだったな」
「どういう事?」
無自覚なの?と天は芝居がかかったように大げさにため息をついた。
「一回、その友人を語ってる自分を鏡で見て来なよ」