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春で1時間使って駄文書いてみた。「諸行無常の末にだって」
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お名前変換可能なので試行錯誤してもらうか、お近くのはちを捕まえてくださいw
かかった時間
80分
注意
○この二次創作は書き手の妄想と勘違いの産物です。
○本編読んだけど断片的にしか記憶ねぇもの。
○だからもう適当に書いてる
○春は偽物
○主人公ちゃんも偽物
これ見ても大丈夫?
それならばお暇つぶしにどーぞ!><
春が感じたもの、見知ったものを付加させたこの曲が、会った事も無い誰かに運ばれていく。
媒体を使って、電波に乗って、時に他の誰かの歌声によって。春が知らない誰かから、また他の知らない誰かに届いたりする。
その人間が何を思うのか、感じるのか。春にはわからない。わからないがどうかひとつ、何かを届けられたなら……まして、それが愛しい恋人に贈る歌ならば殊更に。
「あい、新曲が出来たから聴いてもらっても良い?」
「もう出来たの!?」
「……ああ」
早くあいに聴いて欲しい、と。勿論曲を作り、歌う事を生業としている以上知らない誰かの感想は気になる。だが、あいの感想は更に気になるものだ。
あいはいつも真っ直ぐに素直な感想をくれる。春にとってそれは本当に心地の良いものだった。例えそれがマイナスなものだったとしても、彼女の忌憚のない感想が欲しい。
春が心血を注いで産み出したこの曲に一番最初に触れる人間があいである事がとても嬉しく、誇らしい。春は充足の笑みを浮かべてあいを瞳の中に捕らえる。
「じゃ、じゃあ! 早速聴いても良い?」
「ああ」
春の期待の籠った熱視線にあいはたじろぎながらも、彼が一番欲しい台詞を口にした。その瞬間彼の笑みが更に綻ぶのだからあいはもう直視出来ずに頬を赤らめて視線を逸らす。
「スマホでも直ぐ聴けるようにSDに入れてある。歌詞はこれを、」
「ありがとう。でもパソコンのが音質良いからそっちで聴くね」
新曲が入ったSDと歌詞を渡されあいはパソコンがある部屋へと向かう。春はあいに着いて行こうとするが、その前にあいと自分の飲み物を用意しようと一度キッチンへと向かう。
あいは手元にある新曲が楽しみ過ぎてそこまで気を回せず、直ぐに新曲を聴くために準備を始める。ああ、楽しみだ。毎度この時間はワクワクして仕方がない。まるでクリスマスの朝、枕元を見る子供の気分だ。
「うぅ~、ドキドキする」
きっと春はあいの声に合わせて歌を作ってくれているのだろう。毎回そうだから。言葉選びがまた秀逸で、あいが好みそうな言葉ばかりを使っているのだ。
最近春のおススメで購入したヘッドホンを装着して、あいは神妙な顔つきで三角マークにカーソルを乗せる。ぽち、と左クリックをすれば春の心を覗くような気分になる。
この曲は春の分身だ。あいが愛おしみながら耳を傾ければ最初からあいの気を攫って行く音が重なってくる。音は既に完成されたものだった。
「ふぁ、」
声しかでない、言葉が出ない。あいは歌詞を追うのも忘れて体を揺らしながら耳で音を掻き集めるように聴き入る。この曲もまたあいの心の中に融け込むように入り込んで来た。
春はすごい。春の詩は一体どれだけの人の記憶に残っていくのだろう?春の歌を聴いてどれだけの人がどれだけの想いを紡いだのか。
奮い立ちたい朝に、散歩したくなるような昼に、思い切り泣きたい夜に。優しく寄り添ってくれる音楽を産み出せる春はやっぱり凄いのだ、と。
「あい……珈琲が切れていたから紅茶を淹れたんだが……あい?」
春があいに話しかけるが反応が返ってこない。あいの視線は高音が流れる度に跳ねる一本の線に釘付けだった。
ちょこちょことあいの頭が揺れているのが後ろから見るととても愛らしく、春はゆったりと微笑み側にあったテーブルに紅茶を置く。
丁度曲が一周したところで春はあいに近寄り、再度あいの意識をこちらに向けようと声をかける。
「あい、」
「んっ!? あ、春? ごめん、えっと、これ……早く歌いたい!」
あいが興奮した様子で、キラキラと光らせた瞳の中に春を閉じ込める。今度は春が頬を赤くする番だった。
どうやら今回の新曲もお気に召した様子で、あいは歌詞を手にニコニコ笑っている。
「春の作った曲を一番最初に聴けるのって、すごい特権だよね」
「……そうなのか?」
「うん、私は一番最後に聴く人間にはなれないだろうから……だから凄く嬉しいの」
人は全ての人間に忘れられた時にもう一度死ぬ。それは歌だって同じじゃないだろうか?
春が作った曲は、例え春がこの世界から居なくなっても人々の記憶に残って、生き続けて欲しい。だから一番最後に聴く人間にはならなくてもいい。
グラグラと叫び散らしているかのように魂を揺さぶられる歌もある。まるでJADEのメンバーに背中を押されているような歌だってあった。
恋をして空を飛びあがるような歌も好きだし、恋をして水底に沈んでいくような歌も、思いの丈を思いっきり大地に叩き付けるような歌だってあいはとても好きだ。
恋した日、恋に敗れた日、テストの日、初めて何かをする日、入学式でも卒業式でもなんでもいい。
そんな特別な日にも連れて行ってもらえるような歌をあいも歌いたい。記憶を思い出す時に、一緒に流れてくるような歌を。
「早く歌いたいなぁ……」
うっとり、と歌詞を眺めながら聴き入っているあいを見て春が笑う。勿論あい自身の言葉にも合わせたいからこの曲は完全に完成した訳ではない。
ふたりで話して、春の言葉からふたりの言葉にしていかないとこの曲をあいが歌う意味が無い。しかし春の心は浮足立ったまま。
あいから受けた「早く歌いたい」は「あいに真っ先に聴いて欲しい、歌って欲しい」と願いながら作った春にとって最高の褒め言葉だ。
早く歌いたいあいと、早く歌って欲しい春。両者の想いは重なり合っている。ならばする事はひとつだけ。
「……今日、スタジオが空いているから音を合わせに行くか?」
「うんっ!」
諸行無常の末にだって
響き渡って、例えそれが私の居ない世界でも